こんにちは。文京区在住の歯科技工士、文京ライフです。
今回は、お金や家の表面的なスペックの話から少し離れて、実際に文京区に住んでみて肌で感じた「街の骨格」とも言える地形についてお話ししようと思います。 これから都内、特に文京区のような山の手エリアへの住み替えを検討している方にとって、この「地形」の話は日々の生活の質はもちろん、資産価値や防災の観点からも無視できない重要な要素になるはずです。
- 平坦な楽園「流山おおたかの森」での日々
- 地理学で紐解く「なぜ文京区は坂だらけなのか」
- 坂道で交差する「文豪たち」の足跡
- 実利としての坂道:水害リスクと治安
- 登りきった先に広がる「東京のパノラマ」
- 結論:都内住み替えにおける「足」の正解
平坦な楽園「流山おおたかの森」での日々
僕が以前住んでいた流山おおたかの森は、関東平野の恩恵を一身に受けた、本当に穏やかな地形の街でした。 元々が田んぼや畑だった場所を開発した街ですから、地盤がとにかく平らです。30代の頃は、変速機すらない普通のシティサイクルで、駅前のショッピングモールから少し離れた公園まで、風を切ってどこへでもスイスイと移動していました。
ただ、40歳を迎える頃でしょうか。ふとした瞬間に「あれ、自転車のペダルが重いな」と感じるようになりました。自転車の不調ではなく、明らかに自分の体力の低下です。 そこで導入したのが電動自転車のサブスクリプション(月額レンタル)でした。当時はまだ車も所有していましたが、近場の移動を楽にするための軽い気持ちでの選択でした。しかし、この偶然の決断が、後の文京区移住において僕の生活を救うことになります。
地理学で紐解く「なぜ文京区は坂だらけなのか」
文京区への引越しが決まり、実際に生活を始めてまず驚愕したのは、その圧倒的な「高低差」でした。 坂を下ったかと思えば、息つく暇もなく次の急勾配が立ちはだかる。それはまるで波打つ海原のような地形です。なぜ、これほどまでに坂が多いのでしょうか。
少し地理学的な視点でこの街を見てみましょう。 文京区は、広大な武蔵野台地の東端にあたります。この台地が長い年月をかけて神田川やその支流によって侵食され、深く削り取られた結果、台地と低地が複雑に入り組んだ地形が形成されました。
具体的には、区内には「関口台」「小日向台」「小石川台」「白山台」「本郷台」という5つの舌状台地が存在します。まるで巨人が台地の上に手を置き、その指の間が谷(低地)になったような構造をしています。 僕たちが日々上り下りしている「坂」とは、この台地(高台)と谷(低地)を行き来するための、いわば「台地の側面」なのです。
このダイナミックな地形こそが文京区の正体であり、平坦な流山とは決定的に異なる点でした。
坂道で交差する「文豪たち」の足跡
日々の移動で息を切らすことになるこの高低差ですが、単なる「生活の障壁」だけで終わらないのが文京区の奥深いところです。この坂道の多くには、江戸時代からの歴史と物語が刻まれています。
例えば、千駄木にある「団子坂」。 かつて森鷗外が近くに住み、夏目漱石の作品や江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』の舞台にもなったこの坂は、急な勾配とともに明治の文豪たちの気配を色濃く残しています。電動自転車のアシストを借りてこの坂を登る時、ふと「漱石もこの勾配を歩き、物語を構想したのだろうか」と思いを馳せることがあります。
あるいは、本郷にある「菊坂」。 かつて樋口一葉が生活に困窮しながらも通った質屋の蔵が今も残り、路地裏には当時の井戸が現存しています。細く長く続く坂道は、一歩踏み入れるだけでタイムスリップしたような錯覚に陥ります。
流山時代には感じられなかった、「土地そのものが記憶を持っている」という感覚。ただの移動経路だった「道」が、歴史と物語を含んだ「舞台」に変わる瞬間です。
実利としての坂道:水害リスクと治安
情緒的な面だけでなく、実は「坂の上(高台)」に住むことには、資産防衛や安全面での合理的なメリットも存在します。
一つ目は「水害リスクの低減」です。 近年、ゲリラ豪雨や台風による浸水被害がニュースになりますが、ハザードマップを見ると一目瞭然です。谷底の低地エリアに浸水予想が出る一方で、台地の上である高台エリアはほとんど影響を受けません。物理的に高い場所に住むということは、それだけで水害に対する強力な保険となります。
二つ目は「治安と防犯」です。 一般的に、高台は古くからの武家屋敷や大名屋敷があった場所が多く、現在でも落ち着いた高級住宅街が形成されています。地盤が良く、見晴らしの良い場所には、自然と質の高いコミュニティが生まれる傾向にあります。 また、物理的な側面として、泥棒は逃走経路の確保が難しい坂道や階段の多いエリアを嫌うという説もあります。文京区が23区内でもトップクラスに治安が良いとされる背景には、こうした地形的な特性も少なからず影響しているのかもしれません。
登りきった先に広がる「東京のパノラマ」
そして最後に、僕がこの過酷な坂を愛してやまない個人的な理由をお伝えします。それは、坂を登りきった後に待っている「ご褒美」のような景色です。
ある日の夕暮れ時、電動自転車で長い坂を登りきり、ふと視界が開けた瞬間のことです。 東の空を見上げれば、夕焼けに染まる雲を突き抜けるように、東京スカイツリーがその鋭利なシルエットを浮かび上がらせていました。その足元には下町の屋根が密集し、新旧の東京が混ざり合う不思議なコントラストを作り出しています。
また別の日、高台から西の方角を望めば、そこには新宿副都心の高層ビル群が屏風のように立ち並んでいました。ガラス張りのビルたちが西日を反射して輝き、その巨大な質量が東京という都市のエネルギーを無言で物語っている。
低層住宅が中心だった流山では、空は広かったものの、こうした「都市のレイヤー」を感じることはありませんでした。自分の足で高みへ登り、そこから都市を見下ろすという行為。それは、東京という街のダイナミズムを全身で感じる体験でもあります。
結論:都内住み替えにおける「足」の正解
結論として、文京区をはじめとする都内の高低差があるエリアに住むのであれば、「電動アシスト自転車」は贅沢品ではなく、必須のインフラであると断言できます。
40代を過ぎ、仕事に子育てに追われる僕たちパパ世代にとって、移動で体力を消耗しすぎるのは得策ではありません。小回りが利き、どこへでも行ける自転車の利便性を享受しつつ、身体への負担を最小限に抑える。そのためにはテクノロジーの力を借りるべきです。
僕のようにサブスクリプションを利用して初期費用を抑えるのも賢い選択ですし、長く住む覚悟で高性能な一台を購入するのも良いでしょう。街中には「ドコモ・バイクシェア」や「LUUP」などのシェアサイクルも溢れています。まずは週末にこれらを借りて、実際に坂道を走ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
その坂の先には、きっと平坦な道では出会えなかった、心を震わせる景色や歴史、そして「安心して住める土地」との出会いが待っているはずです。
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