こんにちは。文京区在住の歯科技工士、文京ライフです。
都内への住み替えを本気で検討し始めたとき、皆さんはまず何から始めますか? おそらく、多くの方がポケットからスマートフォンを取り出し、SUUMOやHOMES、at homeといったポータルサイトのアプリを開くところからスタートするのではないでしょうか。
僕もそうでした。 通勤電車の中、昼休みの隙間時間、そして子供が寝静まった後のリビングで。 「文京区 戸建て 3LDK 駅徒歩10分以内…」 検索条件を保存し、新着通知が来るたびに画面をタップする日々。
でも、結論から言います。 僕が今住んでいるこの文京区の自宅に出会ったのは、デジタルの画面の中ではありませんでした。 今回は、僕が実際に文京区で家を購入するに至った、ちょっとアナログで、でも激戦区の都内では一番確実かもしれない「家探しのプロセス」についてお話しします。
ネットの情報だけで一喜一憂し、なかなか理想の物件に巡り会えずに疲弊しているパパさんたちのヒントになれば嬉しいです。
郊外と都心、「家探し」のルールは全く違う
以前の記事でも触れましたが、文京区に来る前、僕は千葉県の「流山おおたかの森」に住んでいました。
あの頃(2009年頃)の家探しは、今思い返すと非常に穏やかでした。 開発が進む郊外では、数十戸単位の大規模な分譲地がドーンと販売されます。週末に家族で現地販売センターへ行き、完成済みのモデルハウスや更地の区画をゆっくり見学する。 「A号棟もいいけど、日当たりならB号棟かな」「いや、角地のC号棟も捨てがたいね」 そんな風に夫婦で話し合い、翌週にファイナンシャルプランナーと資金計画を相談して、そのまた翌週に決める。 検討にはある程度の「時間的な猶予」があり、それはまるでショッピングモールで家具を選ぶような、楽しい悩みのある時間でした。
しかし、子供の成長と共に都内への住み替えを決意し、いざ文京区で家を探し始めると、その常識は通用しないことに気づかされました。 ここは成熟した住宅街。そもそも広大な空き地などありません。市場に出るのは、古家が解体された後の、一軒家がやっと建つかどうかの小さな土地(ミニ開発)や、単発の売り地ばかりです。
そして何より驚いたのが、その「スピード感」です。 ポータルサイトにお目当てのエリアの物件情報が出て、「お、これ良さそうじゃん。今度の土曜日に見に行ってみようか」と妻と話している間に、サイトからその情報は消えています。
「掲載されました!」という通知を見て開いた時には、もう誰かが買い付けを入れている。 「あ、もう売れました」 不動産屋さんに問い合わせても、返ってくるのはこの言葉ばかり。
都内の不動産市場は、想像以上に流動性が高く、まさに「椅子取りゲーム」の状態でした。 郊外でのんびり家を買った経験しかなかった僕は、このスピード感に完全についていけず、しばらくの間、ただ指をくわえて画面上の物件が「成約済み」になるのを見送るだけの日々が続きました。
スマホを置いて、街へ出よう
「このままでは一生買えない」 そう悟った僕は、戦術を根本から変えることにしました。
ネット検索に張り付く時間を減らし、その分、体を動かすことにしたのです。 具体的には「住みたい街を、自分の足で歩く」。これに尽きます。
休日のたびに文京区へ通い、Googleマップを見るのではなく、あえて地図を持たずに路地を歩き回りました。 画面上では「駅徒歩○分」という数字でしかありませんが、実際に歩くと様々な情報が入ってきます。 「この坂道は意外とキツイな」「ここの商店街は活気があって買い物が楽しそうだ」「一本裏に入ると驚くほど静かだな」
自分の五感で街の雰囲気を確かめることで、「住みたいエリア」の解像度が上がっていきました。 そしてもう一つ意識したのは、街にある「昔ながらの不動産屋さん」への訪問です。 駅前にある大手チェーンではなく、ガラス戸に手書きの物件図面がペタペタと貼ってあるような、地元の老舗店。入りにくい雰囲気はありますが、勇気を出して飛び込みました。
ネットには載らない、地主さんから直接預かっているような「水面下の情報」や、これから売りに出る予定の「未公開情報」は、意外とこういう場所に眠っています。 たとえその場ですぐに良い物件がなくても、「このエリアで探している」と顔を覚えてもらうだけで、ネット検索組より一歩リードできるのです。
その「看板」は突然現れた
そんな「アナログ作戦」を続けていたある日のこと。 文京区内でも特に「この辺りの落ち着いた雰囲気、好きだなあ」と感じていたエリアを散策していた時でした。
住宅街の中に、ポツンと更地になっている一角がありました。 フェンスで囲われたその土地の前に、工事現場によくある「建築計画のお知らせ」のような、小さな立て看板が立っていたのです。
ふと目をやると、「新築分譲予定」の文字。 そしてその下には「価格7,000万円前後」という、文京区の新築にしては現実的な数字が書かれていました。
(…これだ!)
直感が走りました。 まだ建物はおろか、基礎すらできていない更地です。ネットにはまだ載っていない(あるいは載る前の)情報のようでした。 しかし、場所は最高です。 都営三田線と東京メトロ南北線の2路線が徒歩圏内で使える利便性がありながら、大通りから一本入った閑静な場所。
看板をよく読むと、権利形態は「借地権」とありました。 所有権にこだわっていたら、このエリアでこの価格は絶対にあり得ません。土地の所有権を持たない代わりに、価格を抑えて「立地」と「住環境」という実利を取る。 これまでの家探しで養った相場観が、「これは買いだ」と告げていました。
僕はその場で、看板に書かれていた不動産屋さんの携帯番号に電話をかけました。 「今、看板を見ているんですけど、詳しく話を聞かせてもらえませんか?」
そこからの展開は早かったです。すぐに営業さんと会い、別の場所にある同仕様のモデルルームを見学させてもらいました。 住宅の質や設備もしっかりしており、何より「ここでの生活」が具体的にイメージできた。
僕は、まだ家が建っていないその更地を、その場で購入する決断をしました。 もし一旦持ち帰って検討していたら、その間にネットに情報が掲載され、またたく間に他の誰かに奪われていたでしょう。
都内の家探しは「ネット通販」ではなく「釣り」
今振り返ると、都心での家探しは、Amazonで商品をポチる「ネット通販」とは全く別物でした。 カタログ(検索サイト)を見て、気に入ったものをカートに入れれば届く、という世界ではありません。
どちらかと言えば「釣り」に近いです。 いつどこで魚(良い物件)が現れるかわからない。 家でネットという「魚群探知機」だけを眺めていても、実際の魚は釣れません。
現場(街)に行き、糸を垂らし(不動産屋を回り)、水面の変化(更地や看板、建築計画)に目を光らせる。 そして、浮きが沈んだ(物件が出た)瞬間に、迷わず竿を合わせる(即電話する・決断する)。 この「現場感覚」と「瞬発力」こそが、ライバルの多い都内で理想の家を手に入れるための、泥臭いけれど唯一の方法だったのだと思います。
もちろん、7,000万円という金額は決して安くはありません。僕のような一般的なサラリーマン家庭にとって、借地権とはいえ、この決断が怖くなかったと言えば嘘になります。 でも、今の家での暮らし、通勤の楽さ、子供の教育環境、そして週末に家族で楽しむ文京ライフを考えると、あの時、散歩の途中で看板を見つけ、即座に電話をかけた自分を褒めてあげたい気持ちです。
もし今、都内への住み替えを検討していて、ネット検索だけで「いい物件がない」と疲弊してしまっている方がいたら、ぜひ一度、スマホを置いてその街を歩いてみてください。 あなたを待っている「看板」が、どこかの路地裏にひっそりと立っているかもしれませんよ。
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